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2009年1月 2日 (金)

電子の国「COARA」刊行に寄せて        平松 守彦

電子の国「COARA」刊行に寄せて         平松 守彦

 大分県は、非常に地形が複雑で、交通体系の整備がたいへんに遅れていた。一九七九年に私が知事に就任して以来、精力的にこの課題に取り組み、最近では高速道路をはじとして、整備が進んできている。

 私は、こうした道路交通体系の整備の遅れをカバーし、地域間のコミュニケーションを進めるため「情報道路」ともいうべき「豊の国情報ネットワーク」を構築し、県内のどこからでも三分十円の市内料金で情報通信ができるようにした。また、この「豊の国情報ネットワーク」を活用したパソコン通信のホストである「ニューコアラ」は、県民や企業がより利用しやすいに、運営面にも配慮したコミュニケーションツールとして機能しており、会員数は約二千人を数えている。今後は、国民生活や産業経済を支える新社会資本としての光ファイバー通信網を整備し、大分からの情報発信力を高めていこうと考えている。

 さて「ニューコアラ」事務局長の尾野徹君が今回、『電子の国COARA』を刊行されるということで、私のところにへ序文の依頼があった。私は一九八六年、請われてコアラの名誉会長に就任しが、この立場からコアラに対するコメントをしてほしいという。以下、私のコアラに対する考え、思いをつづり「序文」として尾野君に贈呈したいと思う。

 「ニューメディア ソフトなければ ただの線」といわれるが、新時代を拓く旗手とはやされた
ニューメディアビジネスも、各県が争って国の指定を受けたテレトピア、ニューメディア・コミュ
ニティも、いざ実際に役立つシステムをつくり上げるとなると容易でない。

 光ファイバー、INS(高度情報通信システム)といっても、結局は情報伝達手段の技術革新で、道路でいうと、一般道路を高速道路に切り替えたようなもの。利用車数が少なければ無用の長物。

これと同じで、光ファイバーでコンピューターをつないでも、よい情報を安い値段で供給する利用(ソフト)技術がないと「ただの線」になってしまう。

 コアラ--といってもオーストラリアからやってきたかわいい動物のことではなく、「大分パソ
コン通信研究協会」の略称COARAのこと。パソコン通信回線でつなぎ、お互いに情報を交換するグループは全国でも相当数あるという。だが、コアラの活躍ぶりはユニークで一味違うと思う。会員数三十人でスタートして現在二千人。メンバーも若手の経営者、公務員、学生、女性、県会議員や県外者、外国人など、よそでは見られない顔ぶれだ。私も名誉会長となっており、知事応接室にはモデムとパソコンが置いてある。

 電話だと、昼間忙しいときにはゆっくり会話もできないが、パソコン通信では、好きな時間に相手にメッセージを送っておけば、受け取ったほうは暇なときにメールボックスから取り出して読める。私も夕方、仕事が一段落すると私あての電子メールを画面に出して見ることにしている。

 「町主催のゲートボール大会へ激励電報を」という依頼や、なかには「通勤バスの運行回数を知事の力で増やして」という陳情に及ぶチャッカリ会員もいる。知事室まできて直接陳情となると受付の課でチェックされるが、パソコン陳情はストレートにできる。

 また、町役場の職員が会員に電子掲示板で町のイベントを紹介したり、放送会社が会員からその日の出来事を取材したりで、利用方法もさまざまだ。今やこのコアラは、専門誌によると注目度全国ナンバーワンという。

 ただ、コミュニケーションは、コンピューターネットワーク上ではすべて可能だが、これはあく
までもバーチャル・リアリティ(仮想現実)の話。コンピューターは、なんといっても人間の補助
的手段であるので、コアラの皆さん方が定期的に集い、フェイス・ツー・フェイスな、血の通った人間同士のコミュニケーションをもつことが極めて大切なことだ。そのうち、「コアラ・デ・デート」や「コアラ結婚」が一層はやり、本県の人口がふえればまさに一石二鳥である。

 コアラはその手軽さといい、コミュニケーションをベースとした楽しみ方といい、まさに時代を
先取りした草の根情報ネットワークといえる。とくにこれからは人と人とのふれあい、交流が大切であり、土の匂いのする情報こそ人間関係を高め、また、新しい地域づくりにも役立つ。この意味からも「コアラ」がますます発展し、会員の中から地域情報化のリーダーが育ってくれることを期待している。

 尾野君の性格、人となりは十分理解しているつもりでいたが、意外な面もあり、また、コアラ発足前後から今日まで隠れたエピソードあり、苦悩ありで寝食を忘れ、会社出勤停止にもめげず、一つのものに邁進するという、つまり"没頭なくしては何事も成就し得ない"典型例だとつくづく感心させられた。また、後藤ニューコアラ会長より大所高所からの指示を受け、抜群のコンビで、呼吸もピッタリ。だからこそ世界に冠たる地域パソコン通信「ニューコアラ」の現在があるのだと思う。

 これからは、GNP型社会(生産重視型)から、GNS型社会(生活重視型)に移行することが求められている。それを実現する一つの手段としても「豊の国情報ネットワーク」や「ニューコアラ」などを高速ディジタル化し、マルチメディア・ネットワークへと変換していかねばならない。

 大分は、この未来のマルチメディア情報社会、ディジタル情報社会を「ハイパーネットワーク社会」と呼んで、これから実現に向けて努力していく。これらの推進にあたって尾野君の「探求心」「熱き心」や「ずうずうしさ」におおいに期待している。アドバイザーというよりはブレインとして今後とも活躍してほしいと思っている。

 最後に地域情報化といっても結局は人づくりである。そのためには地域を活性化する勉強会が必要。「コアラ」もこの中から生まれた。地域の中から仕掛人が出てくることが地域おこしの原動力となり、地域に根付いたニューメディアに結びつく。大分県の地域情報化のさらなる発展に向けて、コアラも「ニューコアラ」から「ハイパーコアラ」へと変身していくと思うので、第二、第三の尾野君が出現することを期待してやまない。

                                (大分県知事・ニューコアラ名誉会長)

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